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平均寿命全うまで:あと58年

「M-1グランプリ2020 準決勝」を鑑賞して

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はじめに

お笑いが大好きだ。

元気が有り余っているときは劇場へ足を運ぶし、そうでないときは寝転がりながらYouTubeを漁っている。

こと賞レースに関しては、注目する年と、あまり興味が湧かない年とがありムラがある。

去年ミルクボーイが優勝を果たした「M-1グランプリ2019」のときは、予選をあまり追えずTVでしか鑑賞しなかった。

それも人の家で鍋をつつきながら。

一方で2018年は準決勝まで見に行ったし、2017年は3回戦と敗者復活戦を現地で見た。

M-1は大体そんな感じであったが、2020年は準決勝を人生初の「ライブ・ビューイング」で見ようということになった。

今回、予選にあまり行けなかった理由はもちろんコロナ(あと普通に現地のチケットに落選した)。

それからM-1の運営が1回戦からYouTubeチャンネルにネタをアップしてくれたこと。感謝しかない。

これで予選に出向く必要はあまりなくなり、めぼしい組は十分チェックしたつもりになっていた。

だが例年、準決勝の模様は無料で共有されない(はず)。

ネットで評判を確かめながら、TVにかじりついて決勝戦だけ見るっていうのも何か嫌だったので、比較的入手しやすいライブ・ビューイングの映画館チケット(3500円)の購入を決めたのである。

 

さて、以下に垂れ流す感想文は、客ウケをあまり加味しない完全な好みによるもの。

★は三段階評価で、個人的主観。特に好きな組には★★★を。

ネタのタイトルはなんとなく。

なるべくネタバレに繋がるような内容に言及しないよう注意し、彼らが約5000組のエントリーから絞られたトップ・エリートな芸人であることを忘れずに、簡潔に書き綴っていく。

 

【Aブロック】

ラランド

「料理番組」

EXIT、ミキなどの名だたる強豪を抑え、ワイルドカード(準々決勝敗退者のGYAOネタ映像において視聴人数1位の組)枠に上り詰めた、大学お笑い出身の若手男女コンビ。

ニシダ氏の若干の緊張が見られたものの、トップバッターを無難に務めた。

下ネタなど、危うい香りのするボケがこのコンビの強みだと思うので、来年以降に期待。

 

タイムキーパー

「幼稚園の先生」

大阪よしもとより、今年最年少のダークホース。

ツッコミのまついあきら氏はなんと平成9年組。若い。

若さを感じさせない貫禄のあるネタだった(見た目も)。

この芸歴で、手数ではなく構成・ボケの質で勝負しているところに才能を感じる。

順番によってはもっとウケていたかもしれない。

 

★金属バット

「彼女」

すっかり人気者の表芸人となった金属バット。

エグみを抑えつつポップに仕上げ、しっかり後半にパンチラインを持ってくる。

小林氏が淡々とボケていく芸風からか、全体的にこじんまりとした印象に落ち着く。

だが友保氏の「あるツッコミ」によって、ここまでで初めて会場が沸いた。

そういう意味では、今年の準決勝の立役者であった。

敗者復活戦でも何かを残すに違いない。

 

★★★ウエストランド ※通過

「不倫」

一時期はコント漫才をしていたウエストランド

私は迷走しているのではないかと案じた。

今年は原点回帰し、井口氏のモテないキャラが炸裂する旧来のスタイルで戦った。

性格の悪さとワードチョイスがうまい具合にハマっていて、決勝進出も納得のウケ具合。

初・決勝進出おめでとうございます。

 

★★ニッポンの社長

「ラーメン屋」

1つの発想から始まってボケていくスタイル。

このコント師のやる漫才って感じがたまらない。

2人のテンション、見た目といい、絶妙にバランスの備わったコンビだ。

ケツ氏にカメラが寄ったとき、心なしか手が震えているように見えた。

毎年賞レースに食い込む常連でも、会場に潜む「マモノ」には気を付けなくてはならない。

後半の「あるボケ」で私は大笑いした。

 

★ランジャタイ

「ちくわ」

ネタのタイトルをどうすればいいのか本当にわからない。

相変わらず、奇々怪々で唯一無二のネタをパワープレイで披露。

たとえば台本があったとして、文字に起こすことは到底不可能な漫才。

国崎氏の表現力の高さは、50年後の落語を見ているかのような感じ。

展開は意味不明なのだが、それでも何をやっているのか状況を追えるのが素晴らしい。

 

【Bブロック】

祇園

「桃太郎」

よくあるコント漫才に、今風のエッセンスを加えた面白い発想のネタ。

だが、この題材ならもっともっと遊べるのではないかと思えてしまう。

個人的にエグみ・クセ、もっと言えば人間の汚さのようなものがあるネタが大好きなので、小綺麗にまとまって終わってしまったなあという印象。

 

★★マヂカルラブリー ※通過

「電車の吊革」

ランジャタイがカオスだとしたら、マヂラブは秩序の中にある無秩序。

今回も野田氏が舞台を自由に使って暴れ回り、村上氏が的確な状況描写を与えていた。

私は、村上氏のツッコミスキルの向上を感じた。

コントインする段階から温かい雰囲気が出来上がっていたように思う。

 

からし蓮根

「居酒屋のバイト」

年々変化球なネタをする組が増加する中、オーソドックスなコント漫才で勝ち残り続ける若手コンビ。

このコンビに毎回驚かされるのは、よくある設定から見たことのない大喜利をして強烈な印象を残してくるところだ。

今回も、お気に入りのボケが何個も散りばめられていた。

ネタ自体はYouTubeでも見られる、2回戦で披露されたものと同じであったが、細かい箇所に追加点があり、それを発見する楽しみもあった。

 

★カベポスター

古今東西

今、賞レースで乗りに乗っている大阪の若手コンビ。

声を張り上げない冷静かつ的確なツッコミが好み。

後半にかけて盛り上がる理想的な構成のネタだった。

欲を言えば、後半のようなくだりをもう少し多めに見たかった…。

 

ゆにばーす

ドッペルゲンガー

衣装も変更し、もはやベテランの風格すら漂わせる男女コンビ。

2人とも熱量が凄まじいネタだった。

会場はウケていたものの、いまいちついていけなかったのは、ネタの内容なのか、テンションの問題なのか…。

はら氏の魂の叫びが感じられるネタを見てみたい。

 

★★キュウ

ルパン三世

この芸風でとうとう準決勝に来たか。

いわばツッコミ不在で、2人で言葉遊びをするネタなのだが、そのゆったりとしたテンポが心地よい。

すっかり独特なワールドに魅了され、ネタ時間をまったく長く感じさせなかった。

 

アキナ ※通過

「地元の子」

並の芸人がやったら複雑になりそうな構成だが、これほどまでに見やすくできるアキナの手腕たるや。

数多の賞レースを潜り抜けてきたアキナだからこそ磨き上げられるネタだろう。

ライブ・ビューイングだと、山名氏がボケる良いタイミングでカメラが寄っていて、そこが会場のウケにも響いていたと思う。

ただ、決勝にするっと通過するのは予想できなかった!

 

【Cブロック】

★★★おいでやすこが ※通過

「カラオケ」

ツカミから大爆笑。もうこの時点で勝利は確約。

ネタも2回戦のものからかなりブラッシュアップされていた。

革靴の音だけで涙が出るほど笑うことがあるだろうか?

ライブ・ビューイングは彼らのために用意された催しなのかもしれない。

それぐらい映画館の音響と相性が良かった。生で見たら腹がよじれるだろう。

ベテランピン芸人2人が、あの「まさかのニュース」から起死回生。

即席ユニットコンビが、前代未聞の決勝進出。

爆ハネすることを大いに期待、今年一番の有望株。

 

★オズワルド ※通過

「改名」

ツッコミが2手3手先を行く、お洒落な漫才。

佇まいから物静かな芸風を予想しがちだが、後半は結構キレッキレ。

ファイナリスト記者会見でも言っていたが、前年の準決勝はトム・ブラウンの後だったんだね…。

幸か不幸か、今年もおいでやすこがのバカウケ旋風の後。

しかしながら、しっかりとファイナリストの風格でやりきった感。

今年は上位もありそう。

 

★★ロングコートダディ

「棚」

ニッポンの社長といい、コント師がワンアイデアで遊ぶ漫才が大好きだ。

兎氏の憎たらしいキャラが、またいい味を出している。変なところで噛んでいたけど。

そして、肝心な部分には「あえて触れない」美学を極持っている、コンビの頭脳・堂前氏。

本職コントの芸人による、最も理想的なタイプの漫才。

 

インディアンス

「人助け」

田渕氏が小気味よくボケていき、きむ氏の邪魔をしていくという漫才。

ボケ連打はさることながら、2人の息が例年以上に合っていて、今年のM-1に賭ける本気度の高さを窺わせる。

相当熟練しているのだが、時折ネタの本筋を見失ってしまうことがある。

いや、そういうネタなんだけど。

ついていくのに必死で、見ていて疲れてしまうのが難点に感じた。

 

東京ホテイソン ※通過

「謎解き」

ツッコミのスタイルで遊びを追究しすぎた結果、とうとう謎解きを始めた。

たける氏のあの伝統芸能仕込みのツッコミは、どんな答え合わせをしてもウケるゾーンに入っている。

お笑い好きにはスタイルが知れ渡っている中で、よくもここまで一線級のネタを生み出し続けられると思う。

個人的には頭角を現した時点で決勝レベルには至っていると思っていたので、「やっと来たか」といった感じ。

決勝では、同じネタを披露するのだろうか?

 

★★★コウテイ

「熱血教師」

MCのはりけ~んずも言っていたが、まさに実写版ギャグ漫画。それもコロコロコミック

構成、展開、表情、動き、ワードのセンス。どれを取っても強い。

それに加えてあの勢いである。あんなんされて笑わないわけがない。

コウテイにそこまで詳しくないので軽率な評価になるかもしれないが、普段のネタとは違う、いくつかの新たな試みをしているように思えた。

決勝には当然いくと確信していたが、現実はそう甘くなかったようだ。

だが、いつか必ずTVで暴れている姿を見ることができるだろう。

 

【Dブロック】

学天即

「旅行」

今年ラストイヤーのベテラン。

THE MANZAIで初めて見たときはハマったなぁ。

小さなミスから、奥田氏の緊張がスクリーン越しにも伝わってきてしまった。

ハケをトチったところでもう完全にそうだと思った。これがマモノか。

(賞レース的に)時代に恵まれなかったというのもある。

本当にお疲れ様といった感じです。いや、まだ敗者復活もある!

ボケの四条氏は芸名が「つくね」になったと思ったら、いつの間にか「よじょう」に変わってた。

 

ダイタク

「ハワイ旅行」

西の吉田たち、東のダイタク。女のDr.ハインリッヒ。若手のADVANCE。

双子芸人で今年一番仕上がっているのはダイタクだった模様。

ダイ氏の滑舌の甘さが少し気にかかり、ネタのほうに若干の集中を欠いた。

普段は、少しこちらも頭を働かせなくてはいけない複雑なネタをしている印象だったが、今年は比較的見やすかった。

 

見取り図 ※通過

「マネージャー」

個人的には大本命で、優勝予想をしていたコンビ。

YouTubeチャンネルも面白いので、すでにファンになっていた。

期待値を上げすぎたのもあってか、正直落選したかなと思ったが無事通過。

アキナと、ある点で少し構成が被っているように思えたが、とにかく落選したと思ったところが通るんだからM-1は奥が深いものだ。

 

ぺこぱ

「不動産屋」

去年のM-1に最も恩恵を受け、売れに売れたコンビ。

今年もしっかりと練られたネタで、実力で勝ち上がってきた。

観客が従来のスタイルに「飽き」が来ているのを見越して、松陰寺氏が予想を1枚上回るツッコミをしていた。

今回は哀愁も強めで、そりゃあお笑い好きは笑うでしょうといった感じ。

敗者復活戦でも活躍すること間違いなし。

 

★★滝音

「引っ越し」

今、最も脂が乗っている滝音。今年はすんなり決勝に進むと思っていた。

さすけ氏がベイビーワードを産み落としていく漫才は、今やスベり知らずといったところ。

秋定氏がベイビーワードに困惑する演技もめちゃくちゃ効果的で、面白い。

一方でベイビーワードに偏重したストロングスタイルの漫才なので、ネタの展開的なところが少し損なわれる感じもある。

あと1か所、時間の使い方が勿体ないと思われる箇所があった。

行くなら今年だと思っていたが、来年はどう進化するだろうか。

 

★★★ニューヨーク ※通過

「爆笑エピソード」

もう嶋佐氏のツカミから観客に受け入れられていた。

内容は一部で物議を醸しそうな、まさにニューヨークにしかできない漫才。

覚醒を感じた。

ともすれば優勝もあり得るのではないかという、ハマれば無敵状態の強ネタ。

去年、変化球の歌ネタで泣きを見ただけに、宣言通りぶっ壊してほしい。

 

★錦鯉 ※通過

「パチンコ」

M-1最年長コンビ。というか歴代でも1位だろうか?

2人とも芸歴20年超えの大ベテランだが、M-1は「結成年」なので問題なし。

R-1も見習え!と誰かがバタバタして怒ってそうです。

シンプルに頭をペチペチ叩くという古典的なツッコミが、何でこんなにも笑えるのだろうか。

TVでも爆笑をかっさらっている場面が容易に想像できる。

東京ホテイソンたける氏は、父親とまさのり氏が同じ年齢(49歳)であると会見で発言していた。

そんなのもう異種格闘技でしょ。

ちなみに調べたところ、ナイツ塙氏は42歳、サンドウィッチマン富澤氏は46歳、中川家礼二氏ですら48歳。

審査員たちとどんな絡みをするか楽しみで仕方ない。

 

*****

★★★麒麟川島明

ファイナリスト記者会見のMCにして隠れMVP。

株主総会」「岡山の成人式」など、生放送で飛び出したとは思えないキレキレのツッコミを間髪入れず繰り出していた。

 

おわりに

R-1グランプリ芸歴制限の悲報から数日、おいでやすこががここでボーナスステージに突入すると誰が予想しただろうか。

見取り図、アキナの堂々の決勝進出。

ニューヨーク、オズワルドの躍進。

マヂカルラブリーの逆襲。

第七世代からいつの間にかはみ出した東京ホテイソンの、売れる予感。

ウエストランド、錦鯉の非よしもとベテラン勢の活躍も期待したい。

コウテイ滝音のような今確実にキテる若手が落ちてしまったのは残念であった。

だが、彼らのベストに近い出来のネタをリアルタイムで観覧できたことは非常に良かった。

 

ライブ・ビューイングは生で観覧するのと遜色ない臨場感であった。

激戦の興奮冷めやらぬまま、ファイナリスト発表をそのまま見られるなんて、なんと贅沢なことだろうか。

館内からは、ウエストランドの名前が挙がったところで歓声が漏れていた。

M-1のこういう熱いところが好きだ。

「映画館でお笑い!?」ということで何となく食わず嫌いしていたが、これなら来年も絶対行こう、ライブ・ビューイング

 大満足。